アミノ酸は、タンパク質をつくっている一番小さな成分です。19世紀末に炭水化物、脂肪、タンパク質の3大栄養素が生命維持のために必要だとされ、タンパク質を研究した結果、数種類のアミノ酸に分解されることがわかりました。
その後の研究において、アミノ酸はあらゆる生物のタンパク質に含まれることがわかり、最新のDNA研究でもアミノ酸が基本になっています。
アミノ酸を必要としない動植物はおらず、つまりアミノ酸は生命の一番大切な物質だと言えます。現在では自然界に存在するアミノ酸は500種類とも言われています。
私達の身体の60%は水分で、残りの40%はタンパク質、脂質、無機質、糖質です。40%のうち、タンパク質が最も多くて、体重の15~20%がタンパク質だと言われます。
私たちの体に一番必要な栄養素がアミノ酸です
身体を作るには10万種類のタンパク質、60兆個の細胞が必要ですが、500種類のアミノ酸の中でも、人間の細胞は20種類のアミノ酸で作ることができます。
20種類のアミノ酸を使って、パズルのように数個から数万個の組み合わせをすることで、私達の身体は作られるのです。このパズルの設計図である遺伝子情報(DNA)もアミノ酸を原料にしてつくられます。
このDNAをもとに、筋肉、骨、脳、内臓、中枢神経、血液、皮膚、髪の毛、爪、体内酵素やホルモンまでもが全てアミノ酸からつくられるのです。
私達の細胞は、毎日1兆個が新しく作りかえられます。作りかえ(新陳代謝)を繰り返すことで、健康を維持し、ダメージを受けた細胞を新しくする事が出来ます。
自然治癒力とは、このように古くなったタンパク質を作りなおし、新しくする事。言いかえれば、20種類のアミノ酸が充分に足りてこそ、健康を維持し、自然治癒力を発揮することが出来るのです。
これら20種類のアミノ酸を、不足しないように補給するには、日々の食生活が基本になります。
まんべんなく20種類を補給するのは難しいのですが、11種類のアミノ酸は、他のアミノ酸や脂質、糖などを原料にして、体内で合成することが出来ます。
ところが残りのアミノ酸は体内で合成することが出来ないため、食品として摂取するしかありません。これを必須アミノ酸とよびます。
タンパク質はアミノ酸に分解され、再合成される
食品として食べたものは、そのままでは生命活動に使うことは出来ません。例えば、卵を食べた時、噛み砕かれた卵は唾液と混ぜられ、胃(消化器官)に運ばれます。消化器官でタンパク質を分解する酵素によって、卵のタンパク質はアミノ酸に分解されます。
卵に含まれる『アルブミン』というタンパク質は、アミノ酸レベルにまで分解され、血液によって細胞に運ばれ、そこで、『血漿アルブミン』というタンパク質に再合成されます。
卵の『アルブミン』も『血漿アルブミン』もアミノ酸から出来ていますが、『卵のアルブミン=人間の血漿アルブミン』ではありません。
『消化→分解→吸収→再合成』の働きで、再合成の設計図がDNA(遺伝子情報)で、DNAもアミノ酸から作られています。
これらのアミノ酸が有効に働くために、例えばアミノ酸から酵素やホルモンを作るためにはビタミンBが必要ですし、アミノ酸吸収・再合成にはビタミンC、血液循環を良くしてアミノ酸を体の隅々に送るにはビタミンEの助けが必要になります。
20世紀は「ビタミンの時代」と言われていましたが、本当はアミノ酸がなければビタミンも本来の働きが出来ないのです。
食品として食べたタンパク質は、消化から再合成まで3~4時間は必要です。しかも、100gの牛肉を食べたとしても、アミノ酸として吸収されるタンパク質は約18gで、残りは便として排泄されます。これは健康な人の例ですので、胃腸の弱い方や体力の無い方ではこれ以下です。
このように、食品として摂取し、
【タンパク質を分解→吸収→タンパク質に再合成】
という働きがあってこそ、正常な細胞をつくることが出来るのです。ここのアミノ酸はペプチド結合によってつなげられて、長い鎖にようになります。
この鎖がタンパク質で、普通は100個以上のアミノ酸から作られていますが、インシュリン(膵臓のホルモン)は51種類という少ないアミノ酸から作られています。
必須アミノ酸・準必須アミノ酸と非必須アミノ酸
体内で合成できないアミノ酸は、「絶対に摂取しなければならないアミノ酸=必須アミノ酸」と呼ばれ、体内で合成できるアミノ酸は、非必須アミノ酸と呼ばれます。
最近は非必須アミノ酸でありながら、積極的に摂取すべきアミノ酸を準必須アミノ酸とよんでいます。
必須アミノ酸が不足すると、細胞をつくるためのアミノ酸や、アミノ酸を合成する原料が不足することになります。
必須アミノ酸不足は、自然治癒力の低下、集中力や記憶力の低下、脂肪の燃焼不足、免疫力の低下等の原因になり、健康な身体を維持できなくなります。
必須アミノ酸の中で、ヒスチジンは幼児期・成長期は体内で合成できませんが、それを過ぎると作ることができるようになります。
そのため、以前は幼児期のみ必須アミノ酸とされてきたヒスチジンですが、最近では成長期が過ぎても摂取すべきとされて必須アミノ酸に加えれるようになっています。
ちなみに体内で合成出来る非必須アミノ酸ですが、年齢と共に作ることのできる量は減少します。
アミノ酸の摂取による効果
アミノ酸は細胞の原料になるだけでなく、それぞれが様々な働きをしています。また複数のアミノ酸を組み合わせたり、ビタミンやミネラルなどの栄養素と組み合わせることで、より多くの力を発揮します。アミノ酸の効果について、代表的な働きを紹介します。
疲労回復
グルタミン酸は疲労除去に欠かせないアミノ酸です。非必須アミノ酸ですから、体内での合成は出来るのですが、年齢と共に合成できる量は減少します。年齢と共に疲労感が出てくるのは、疲労を軽減してくれるグルタミン酸の摂取量が不足し、同時に体内での合成量が減ってくるからです。
スポーツでは、筋肉を動かすとグルコース(糖分)が筋肉中でエネルギーとして使われる時、疲労物質(乳酸)が発生します。アラニンは使われたグルコースを再生してくれ、疲労除去とエネルギーの再利用に役立ちます。
筋力強化
スポーツの世界でアミノ酸が重要視される要因に、筋肉力のアップがあります。バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは特に筋力アップには欠かせないアミノ酸です。
これらのアミノ酸は他のアミノ酸と分子構造が違い、BCAA(Branched Chain Amino Acid=分岐鎖アミノ酸)と呼ばれています。
私達の身体の筋肉は内臓を動かす筋肉と、運動をするための筋肉に分けられますが、運動をする為の筋肉に含まれるタンパク質のうち、必須アミノ酸の大部分(35%)はBCAAです。
激しい運動をした後、筋肉痛が起こることがあります。
これは運動によって弛緩と収縮を繰り返した筋繊維が炎症をおこしたり、筋肉疲労で筋繊維が切れる事が原因です。
一度切れた筋繊維は修復され、修復前よりも太くてしなやかな繊維をつくります。トレーニングで筋肉が増えるのはそのためです。
筋肉をつくるタンパク質であるアクチン、ミオシンはBCAAが主成分です。切れた筋繊維を修復するには、BCAAは欠かせないアミノ酸です。運動前のBCAAはスタミナ維持に役立ち、運動後のBCAAは筋肉痛の予防に役立ってくれるのです。
筋肉中のグルコースを使い切った後、BCAAは運動エネルギーとして使われますが、この時に乳酸は発生しません。
マラソンなどの長時間の運動では、BCAAを使った運動エネルギーが必要となりますが、BCAAがあらかじめ筋肉に蓄えられていないと筋肉繊維が破壊されてしまいます。
運動すればするほど筋肉繊維が減少してしまうため、運動前、運動中、運動後のBCAA(=バリン、ロイシン、イソロイシン)補給が欠かせません。
集中力の向上、記憶力のアップ
集中力と記憶力には密接な関係があります。記憶力には感覚記憶、短期記憶、長期記憶という3種類があります。
午前中に友人や上司と話した内容が、帰りには全部思い出すことが出来ないのは、「会って話す」という短時間に受けた刺激で、しかも同じ内容を繰り返さない「短期刺激」によるものです。
「感覚刺激」はもっと無意識に行っている行為、例えば「信号が青だから発進した」という、後々思い出すことのない(必要のない)記憶のことです。
集中力は「長期記憶」に深く関わっています。
スポーツで繰り返しトレーニングを積むことで試合で集中できたり、毎日机に向かって勉強することで、次第に勉強の効率が上がったりします。
最初はトレーニングでも勉強でもなかなか集中できなかったことが、同じ動作を繰り返すことで、例えば「机に向かう=勉強する」という「長期記憶」がつくられるからです。
脳は神経細胞、グリア細胞、毛細血管でつくられています。
一般的に脳細胞と言われるのは神経細胞のことで、長期記憶のように何度も同じ刺激を与えることで、脳細胞が記憶する物質(樹状突起)をつくります。
グリア細胞は脳で使われるエネルギーをつくったり、血液で運ばれてきた栄養や酸素を脳細胞に渡す役割があります。
複雑な受け渡しをすることで、脳内にアンモニアなどの毒性物質が入ることを防ぐのです。
この働きを「BBB(Blood Brain Barrier)=血管脳関所」と呼ぶのですが、細胞の原料になるアミノ酸も、このBBBを通過するのは難しいのです。
ところが、イソロイシン、アルギニン、チロシン、フェニールアラニン、グルタミン酸の5つのアミノ酸は、このBBBを難なく通過することが出来ます。脳細胞に渡された5つのアミノ酸は、脳細胞がエネルギーをつくる原料になります。また、チロシン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸は脳細胞を刺激し、作業効率をアップさせます。
これらの5つのアミノ酸をブレーンアミノ酸と呼びます。
脂肪燃焼
アミノ酸ブームの大きな要因に「アミノ酸=痩せる」というイメージがあります。「アミノ酸=痩せる」はある意味では正しいのですが、多くの場合は間違って解釈されています。
痩せるために、また、生活習慣病の予防にも効果のある「脂肪燃焼」にもアミノ酸は欠かせません。脂肪燃焼にもアミノ酸が大きな役目をしています。
私達が生きていくために必要な、最低限のエネルギー(横になっているだけで消費するカロリー)を基礎代謝、安静にしている時に消費されるエネルギー(静かに座っている時に消費するカロリー、基礎代謝の1.2倍)を安静時代謝といいます。
1日に消費するエネルギーの60~75%を基礎代謝と安静時代謝で占めています。
中年以降に脂肪がつきやすくなるのは、基礎代謝や安静時代謝が低下して、消費されないエネルギーが脂肪として蓄えられるからです。
基礎代謝や安静時代謝のほとんどは筋肉で消費されます。年齢と共に筋肉量が減少し、筋肉以外の組織で消費されるエネルギーは、成長期を除いてほとんど変化しないため、消費エネルギーが減少してしまいます。
では、これらの代謝を良くするにはどうすればよいのでしょうか?。
筋肉を動かして、筋繊維を太くすることで代謝エネルギー量はアップします。
筋肉を動かすと言っても、スポーツ選手のような筋肉トレーニングを行うのではなく、家事や仕事の中でも筋肉を動かす機会は多いのです。
軽い筋肉トレーニングはさらに効果的ですが、ここで問題になるのがアミノ酸です。
「筋力向上」の欄でも説明したとおり、BCAAのアミノ酸は筋肉向上に欠かせません。逆にアミノ酸不足で筋肉トレーニングをすると筋繊維が破壊され、新しい繊維を作ることができませんので、結果として筋肉の量が減少します。
筋肉量が増えることでカロリーを消費しやすい=脂肪を燃焼しやすい身体になれば、有酸素運動を組み合わせることで、より効果的に脂肪を減らすことが出来ます。
水太り防止
動脈で酸素や栄養分、水分などが身体の細胞に送られ、老廃物や余った水分が静脈を通って心臓まで送り返されます。
動脈の毛細血管から細胞組織に栄養や水分が渡され、静脈の毛細血管には不要な物は吸い取られるのですが、この時に静脈の中にはアルブミンという物質が必要なのです。
水分の吸引をするアルブミンが不足すると、身体はむくんでしまいます。これが水太りと言われる状態です。
アルブミンはアミノ酸からつくられるタンパク質ですから、アミノ酸を補給してあげることで水太り、むくみを予防することが出来ます。
食事制限のダイエットでアミノ酸が不足すると、水分代謝が出来なくなり、水太りになってしまいます。
潰瘍抑制
ヒスチジン、グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸は、ストレスなどによって過剰に胃液が分泌されるのを抑え、胃腸の粘膜に傷がつくのを予防します。
また、タンパク質の原料になるアミノ酸が揃っていることで、傷の修復にも役立ちます。
肌の新陳代謝を活発にする
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層から出来ています。表皮はさらに外側から角質層、顆粒層、有棘層の3層に分かれます。
「肌がきれい」な人は、角質層が良い状態だと言うことです。
角質層は一番ダメージを受けやすい層ですから、良い状態を保つことは、角質層をいつも新しい状態に保っていると言うことです。
有棘層では細胞分裂で表皮細胞が生まれ、生まれた表皮細胞は表面に押しやられて、2週間程で角質層まで届きます。
角質層に届く頃には表皮細胞の細胞核は死んでしまい、「表皮細胞の死骸=角質細胞」が皮膚表面となります。
角質細胞はそのままでは剥がれやすいのですが、毛細血管から出る成分のセラミドが角質細胞を肌に張り付かせています。
やがて剥がれ落ちた角質細胞は、垢となって排泄されます。表皮細胞が角質細胞になって剥がれ落ちるまでを「ターンオーバー」といい、健康な人では28日間です。
このターンオーバーが正常に行われると美しい肌を維持できるのですが、周期が長くなると肌の状態が悪くなってしまいます。
ターンオーバーの周期は年齢と共に長くなり、40代では約40日ほどになると言われています。
アスパラギン、チロシン、セリンの3つのアミノ酸は表皮細胞の材料になり、細胞分裂に必要な酵素の原料にもなります。これらのアミノ酸が足りていると、ターンオーバーの周期を正常に戻し、美しい肌を保つことが出来るのです。
コラーゲンを生成する
肌のハリやキメは、真皮の状態で変わってきます。
真皮はコラーゲンとエラスチンという線維質と、線維質の間を埋めるコンドロイチンから出来ています。このうち真皮の70%を占めているのがコラーゲンです。
スキンケア商品でコラーゲン入りの化粧品が多く出ていますが、コラーゲンそのものの分子は大きいため、そのままでは吸収されることはほとんどありません。
また、コラーゲン入りのサプリメントも、体内でコラーゲンがアミノ酸まで分解されてから吸収されます。
コラーゲンもエラスチンもアミノ酸から作られますので、コラーゲン入りの化粧品やサプリメントではなく、アミノ酸を取った方が効果的だと言えます。
また、コラーゲンを生成するアミノ酸を運ぶ役目の細胞、マトリクスもアミノ酸で活性化されます。
きれいな肌の製造元と材料が一度に活性化するので、肌荒れだけでなく、皮膚の修復効果も期待できます。
免疫機能をつくる
私達の身体には免疫力が備わっています。免疫力が低下すると風邪などの病気にかかったり、過剰に働くとアトピー性皮膚炎や喘息、リウマチ、膠原病などのアレルギー疾患を引き起こします。
免疫には細胞性免疫と液性免疫の2つの免疫システムがあり、両方の総合的な力で正常な自己防衛力を発揮します。
細胞性免疫は白血球細胞が働く免疫で、液性免疫はグロブリンというタンパク質が、病原菌に対する抗体として働く免疫です。
睡眠不足や栄養バランスの悪い食事、ストレスなどは免疫システムを麻痺させてしまいます。
アミノ酸はグロブリンをつくる原料になり、グルタミンは細胞膜を通りやすいので、免疫細胞のエネルギーとして使われたり、免疫細胞を増やしたりします。
骨髄でつくられる免疫細胞は、15~18歳頃に一番多く作られますが、その後は次第に生産量が減少し、免疫力が落ちてきます。
年齢による免疫力の低下を遅らせるには、若い頃からアミノ酸を多く摂取し、免疫細胞を多く作るようにしておくことが重要になります。
体内で100~200個、ストレスの多い人では1000個以上のガン細胞が作られますが、免疫力が正常に働いていると、ガン細胞が大きくなる前にキラーT細胞がガン細胞を破壊してくれます。
体内でガン細胞が発生すると、T細胞からインターフェロン(ウイルス抑制因子)が出て、インターフェロンの刺激でマクロファージがNOS(NO合成酵素)という酵素を活性化して、アルギニンからNO(一酸化窒素)を作ります。
NOはガン細胞の中に入って、ガン細胞が呼吸するために必要な酵素を奪ったり、ガン細胞が増殖するために必要なDNAを作る酵素を、働かなくします。
最近の研究では、NOは血管弛緩(血管拡張)作用があり、血圧の調整などの作用もあることがわかっています。
DNAの材料となる
細胞の中には核と呼ばれる部分があり、核の中にはDNA(Deoxyribonucleic Acid / デオキシリボ核酸)が入っていて、このDNAが私達の身体の設計図で、このDNAに書かれている情報が遺伝子です。
DNAはA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という4つの塩基が二重らせん構造になっています。言い換えれば遺伝子情報は4つの単語だけで書かれていることになります。
この遺伝子情報も、DNAを複製するための核酸もアミノ酸がなければ作ることができません。
アンモニア解毒
食品として取ったタンパク質は分解してアミノ酸になり、エネルギーとして使われると水、二酸化炭素、アンモニア(NH3)が発生します。
アンモニアは私達の身体にとって有害で、脳にはいると様々な脳障害を引き起こします。有害なアンモニアを無害にするのは、肝臓のアンモニア解毒作用「オルニチン回路(尿素回路)」です。
肝臓に運ばれたアンモニアは、オルニチン回路で無毒な尿素に変えられ、腎臓に運ばれます。
この時に重要な役割をするのがオルニチンで、通常の食品にほとんど含まれていないオルニチンを、効率的に摂取できるアミノ酸エキスは、「愛肝アミノ酸」と呼ばれています。
この他にも書ききれないほどのアミノ酸の働きがあり、今後も様々な分野でアミノ酸の効果が研究されることでしょう。
アミノ酸はバランスが大切
アミノ酸は体を作るもっとも小さな部品です。機械に例えると、ネジだけがたくさんあっても完成しません。いろいろな種類の部品(アミノ酸)が必要です。
アミノ酸の必要量は種類ごとに決まっています。他のアミノ酸がたくさんあっても1つでも不足するとタンパク質を合成できません。
だからアミノ酸はバランスが大切なのです。
例えば、アミノ酸のバランスと体内で作られるタンパク質の関係を、桶と水に例えることができます。
タンパク質を作るために必要なアミノ酸の割合を桶の板の幅、摂取するアミノ酸の量を板の長さ、桶に入れることの出来る水の量が、タンパク質の量とします。
完全なアミノ酸バランスの場合、必要なタンパク質を充分に作ることができますが、1種類でもアミノ酸の量が足りない場合、充分なタンパク質を合成することが出来ません。
不足しているアミノ酸が、非必須アミノ酸の場合なら、他のアミノ酸を原料にして合成することも可能です。
しかし、不足しているアミノ酸が必須アミノ酸の場合は、十分なタンパク質を作ることが出来なくなります。
又、不足しているのが非必須アミノ酸であっても、体の弱い人や病気の場合、お年寄りの場合は非必須アミノ酸を十分に作ることができません。
ですから、単一のアミノ酸を摂取するのではなく、総合的に20種類のアミノ酸を摂取することが重要になります。
特にサプリメントでアミノ酸を摂取しようと思うときには、総量だけではなく、アミノ酸バランスに気をつけなければなりません。
では、アミノ酸のバランスが狂うとどうなってしまうのでしょうか。
正常な細胞とガン細胞の違いは、たった1つのアミノ酸の違いから起こることがあります。
この例では、細胞を作るタンパク質のアミノ酸配列のうち、下から3番目のアミノ酸(グリシン)がバリンに変わっただけでガン細胞になります。
アミノ酸をつくる設計図(DNA)のたった1カ所の情報、この場合はC(シトシン)がA(アデニン)に変わっただけでも、アミノ酸は間違って作られてしまいます。
正常な細胞を作るためにも、正しいDNAを作るためにも、バランスの取れたアミノ酸摂取は欠かせません。
アミノ酸にはL体とD体があります
健康な体を維持するには、バランスの取れたアミノ酸を十分に摂取することが必要です。
ですが、同じ20種類のアミノ酸でも、L体アミノ酸とD体アミノ酸があります。
例えばオルニチンといっても、L-オルニチンとD-オルニチンがあるのです。
L体は天然型アミノ酸で、細胞や酵素などの身体に必要なタンパク質を作るために使われます。
D体は化学合成でつくられるアミノ酸で、タンパク質の合成には使われません。
石油から作られるアミノ酸はD体とL体が同じだけ出来るDL体アミノ酸で、現在ではDL体アミノ酸はほとんど生産されていません。
サプリメントやアミノ酸飲料で【L体】と記載のないものは、D体アミノ酸を原料にしています。
D体アミノ酸は細胞合成には使われず、運動エネルギーに使われます。
D体アミノ酸は糖分と同じカロリーがあり、使われないD体アミノ酸は糖分と同じように蓄積されます。
D体アミノ酸を使ったアミノ酸飲料は、飲めば飲むだけ太ってしまうのです。
先述の「アミノ酸の効果」は、あくまでもL体アミノ酸の効果です。
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