今回の話題は「任脈」です。
任脈の流注は、督脈と同じく胞中(小骨盤腔)から始まり、会陰部に出て、前正中線上(腹部、胸部、前頸部の中央垂直線)を上り、喉に至り、下顎の正中から下歯齦に至り、顔面をめぐって目に入ります。
上歯齦に入り、齦交穴(督脈)において督脈と会します。
別れた支脈は顔面を上り、承泣(胃経)において、胃経と会します。全身の陰脈経を調整し、陰脈の海と呼ばれます。
督脈の背部診断点と合わせ、募穴の治療点としても多く使うポイントです。背部と違って自分で治療しやすい場所ですから、積極的に使っていきましょう。
【腹部編】
❷曲骨・・・恥骨結合の上縁
※神闕から曲骨までが5寸とされています
7号や8号カップなら1個でカバーできます
❸中極・・・臍中央の下方4寸 膀胱経の募穴
❹関元・・・臍中央の下方3寸 小腸経の募穴
❺石門・・・臍中央の下方2寸 三焦経の募穴
❻気海・・・臍中央の下方1寸5分
❼陰交・・・臍中央の下方1寸
❽神闕・・・臍の中央
❿下脘・・・臍中央の上方2寸
⓬中脘・・・臍中央の上方4寸
胃経の募穴、中庭と神闕を結ぶ線の中点になります
※「脘」とは胃を意味しますから、中脘とは胃の中央のことです
⓭上脘・・・臍中央の上方5寸
⓮巨闕・・・臍中央の上方6寸
心経の募穴
⓯鳩尾・・・臍中央の上方7寸、胸骨体下端の下方1寸 任脈の絡穴
⓱膻中・・・前正中線上、第4肋間と同じ高さ 心包経の募穴
⓴華蓋・・・前正中線上、第1肋間と同じ高さ
華蓋とは肺を指します
背部と比べると、腹部は筋肉が柔らかく、胸部はすぐ下に胸骨があるので、吸引圧は低めたらスタートしましょう。督脈と同じように、流注からは呼吸・循環・消化・泌尿の各器に至近距離からアプローチ出来ます。
12経絡中、任脈に募穴を持つものが6穴あります。治療の際は他の6募穴と合わせると募穴すべてを治療できます。背部の兪穴と合わせ、「兪募配穴」というオーソドックスな治療もありますから、背中と腹部・胸部は重要な治療ポイントです。
自分で治療する場合は座位が多くなりますが、頭部や上背部だけに吸着が集中してしまうと、のぼせてしまうこともあります。一度につけるカップ数を少なめにしたり、足部にもつけて偏らないようにご注意ください。テレビやパソコンをしながらの「ながら治療」も気軽に治療をするには良いですが、そちらに熱中し過ぎて過度な刺激とならないようにしましょう。
前回の督脈と今回の任脈は、今まで積極的に取り上げてこなかった経絡経穴です。陽脈の海が督脈で陰脈の海が任脈ですが、東洋医学には「陰主陽従」という考え方があります。文字どおり、陰が主で陽が従者ですから、任脈が主で督脈が従者ということになります。他にも五臓が陰で五腑が陽、月が陰で太陽が陽などありますが、気になるのは女性が陰で男性が陽ということでしょうか。