肌にガラス製のカップを吸着させる治療法『吸い玉』は伝統の東洋医学の治療法だと思われがちですが、実はヨーロッパでも古くから用いられている伝統的な療法です。
近年では電動式の吸い玉治療機器が発売されるようになり、家庭療法にとどまらず鍼灸やマッサージの施療院でも使用されるようになっています。日本でも医療機器の認可を取得した機器が登場し、整形外科や一般病院、福祉施設での活用もされています。
それでは、そもそも吸い玉とはどういった治療なのでしょうか?
吸い玉療法ってどういうものですか?
吸い玉療法とは、皮膚にカップを吸いつけて皮膚表面を陰圧にすることによって、血流を良くする刺激療法・浄血療法のひとつとされています。
血流を良くすることで隅々の細胞まで栄養や酸素を供給し、溜まっている老廃物を回収することで疲労を取り除き、体をラクにする治療法です。
皮膚にカップを吸いつけつ治療法は一般的には吸い玉療法や吸角療法、あるいはカッピング療法と呼ばれています。
古くから吸い玉治療が盛んな沖縄では『ブーブー』と呼ばれて親しまれています。
この吸い玉療法を電動式にしたもので、医療機器として認可された吸い玉治療器が『バンキー』と『吸灸』です(バンキーの製造元は倒産しております)。
たいへん歴史のある治療法と聞きましたが…?
吸い玉療法の歴史は大変古いものです。
中国では紀元前から使われ、現在でもバッカン療法と呼ばれ親しまれています。
ギリシャの国立考古博物館には、紀元前5世紀頃の吸い玉(青銅製)が展示されています。
その他、古代エジプトでも用いられていました。
吸い玉を医師の紋章とする習慣もみられ、これは紀元前のバビロニアから中世ヨーロッパにまで広がっていたようです。まさに伝統医学の王様といってもよい治療法なのです。
現在ではどうかといますと、お隣の韓国、台湾、中国はもとより、カンボジア、ベトナムといった東南アジア諸国、ロシア、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、ギリシャなどのヨーロッパ諸国、ブラジル、アルゼンチンなどの中南米諸国でも愛用されています。
スポーツ大会でも選手が吸い玉治療をした丸いしるしをつけていたり、映画の場面の中でも吸い玉療法を行なっているのを見ることがあります。
オリンピックでもメダリストがカッピングのあとをを付けたまま優勝し、話題にもなりました。
日本でも使われていたのですか?
「日本書紀」の記述や、日本最古の医書「医心方」にも「スイフクベ」と紹介されています。
江戸時代までは盛んに使われていましたが、明治時代以降の医療はご存知のように完全な西洋医学一辺倒となってしまいましたので、吸い玉療法は医療の表舞台からは姿を消して民間に伝わる医療として伝えられてきました。
しかし、吸い玉療法が現代までの長い歴史のなかで、忘れ去られずに受け継がれてきたという事実は、それだけの効果や実績を上げてきてことによる結果だと思います。
電動式吸い玉療法と従来の吸い玉療法はどこが違うのですか?
吸い玉療法は、皮膚につけた吸い玉(ガラス、焼き物、青銅、真ちゅう製や竹筒など)の内部を減圧し(真空に近づける)、皮膚に吸着させるという方法をとります。
カップの中が減圧されるとその分、皮膚の内部は膨らもうとします。その時に、体の中からガス(二酸化炭素など)が排出されます(この原理は非電動式も電動式吸い玉療法も同同様)。
古来からの吸い玉療法の場合はコップの内部にアルコールや紙などを入れ、火を点火して減圧する方法が一般的です。
タイミングを間違えると火傷の危険性もありますので、手軽に安全にするには技術が必要です。
また、毛髪部分などには吸着させることはできませんし、吸引(減圧)の強さも弱く、その調節も難しいと言わねばなりません。
これに対し電動式吸い玉(『吸灸』等)では、電気により作動する高性能の真空ポンプで物理的に吸引しますから、真空といえる程まで吸引(減圧)することが可能です。
加えて微妙な圧力の調整も簡単にできます。器機本体とカップさえあれば、スイッチを入れるだけで治療ができるという手軽さと共に、治療効果という点でも飛躍的に増しました。
類
似の器機もみかけますが、『吸灸』は厚生労働省より許可を得ている正式な医療用具です。
医療機関への導入実績もあり、医療機関からご家庭まで安心してお使い頂けます。
医療機器として認可された吸い玉治療器の特徴は?
現在では国内唯一の医療機器認可吸い玉治療器として、『吸灸』を例に挙げて特徴をまとめてみます。
- 【高性能】優秀な真空ポンプやモーターを使っているので、真空に近い圧まで吸引(減圧)することができる。
- 【簡易性】吸引調整ダイヤルによって、吸引圧を自由に調整できる。しかも、真空計器(メーター)により、吸引圧の数値を目で確認できる。
- 【安全性】火を使わないので、誰にでも安全に治療できる。[安全性]
- 【多機能】専用の孫の手式カップでは一人で背部の施術が可能で、高性能ポンプなので毛髪部も施療も可能です。
- 【高品質】カップは硬質ガラスを使用し、ゴム部品も含めて紫外線殺菌も可能です。長期間使用しても傷まず衛生的です。
- 【高い治療効果】皮膚にあらわれる色素反応などにより、より広い健康管理に役立てることがでします。
つまりは従来の吸い玉療法と比べて、性能と安全性、また治療効果において、たいへん優れた面をもっていることになります。
誰でも治療することができますか?
医療機関で行っていると聞くと専門家でしか施療できない感じがしますが、実際にはご家庭でも施療することが出来ます。
使い方も難しくありませんので、誰でもが手軽に治療を行うことができるようになっています。
例えば『吸灸』の場合は、器機の操作に特別な技術は要らず、カップをつけるだけならばお子さんでも出来るのです。
小学生のお子さんが、おじいちゃんおばあちゃんの治療のお手伝いをする、といった微笑ましい話がよく聞かれるのもそのあらわれです。
治療する場所についても、基本的には違和感のあるとこと(たとえば、痛いところ、凝るところ、痒いところ)などからはじめていけば、だんだんに治療にもなれ、自然と的確な治療ができるようになります。
もちろん、医師や鍼灸・マッサージの専門家であれば、筋肉や経絡の流れを応用した効果的な治療を行うことも可能です。